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設計者,工事監理者,及び,工事請負人の第三者責任(不法行為責任)
建物の建築主から建物を譲り受けた者が,建物に瑕疵があることを理由に,設計者,工事監理者,及び,工事請負人に対して損害賠償請求が出来るかという問題です。
第1審の大分地裁(平成15年2月24日判決)は,不法行為責任を認めたようです。
ところが福岡高裁は,
福岡高裁平成16年12月16日判決(判例タイムズ1180号209頁)
「請負の目的物に瑕疵があるからといって,当然に不法行為が問題になるわけではなく,その違法性が強度である場合,例えば...(省略)...,瑕疵の程度・内容が重大で,目的物の存在自体が社会的に危険な状態である場合に限って,不法行為責任が成立する余地がでてくるものというべきである。」
この福岡高裁は,不法行為が成立するためには,強度の違法性が必要である旨判示しています。
この強度の違法性の例として,福岡高裁は,「請負人が注文者等の権利を積極的に侵害する意図で瑕疵ある目的物を製作した場合や,瑕疵の内容が反社会性あるいは反倫理性を帯びる場合」をあげている。
このような意図があったり,また,瑕疵が反社会性反倫理性を帯びていることま稀ですし,また,かりに会ったとしても,建物の購入者がこれらを立証することは事実上不可能ですから,この福岡高裁の判決は,契約関係になり設計者等に不法行為責任を追及することは原則出来ないといっているのと同じと思われます。
これに対して,
最高裁平成19年7月6日第二小法廷判決(第1次上告審)(判例タイムズ1252号120頁)は,
「建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者(以下,併せて「設計・施工者等」という。)は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当である。そして,設計・施工者等がこの義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計・施工者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。居住者等が当該建物の建築主からその譲渡を受けた者であっても異なるところはない。」
と判示し,更に福岡高裁が判断した「強度の違法性」を要求する理論について,
「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には,不法行為責任が成立すると解すべきであって,違法性が強度である場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由はない。例えば,バルコニーの手すりの瑕疵であっても,これにより居住者等が通常の使用をしている際に転落するという,生命又は身体を危険にさらすようなものもあり得るのであり,そのような瑕疵があればその建物には建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があるというべきであって,建物の基礎や構造く体に瑕疵がある場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由もない。」
として,前記福岡高裁判決を破棄し,福岡高裁に事件を差し戻しました。
福岡高裁平成21年2月6日判決(第2次控訴審)(判例タイムズ1303号205頁)
事件を差し戻された福岡高裁は,
「『建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵』とは,建物の瑕疵の中でも,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険性を生じさせる瑕疵をいうものと解され」る。
と判断しました。
つまり,今現在,現実的な危険性が生じるような瑕疵でなければならず,将来危険が生じるかもしれないような瑕疵ではダメですよ,と判断したのです。
そして,結果的に,設計者らの不法行為責任を否定しました。
福岡高裁鬼門ですねw
当然,最高裁に行きます。
最高裁平成23年7月21日第一小法廷判決(第2次上告審)(判例タイムズ1357号81頁)
「第1次上告審判決にいう『建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵』とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」
と判断し,又々福岡高裁判決を破棄しました。
今現在生じている現実的な危険だけではんなく,将来,生じるであろう危険も含まれるとされました。
でやっと先月
平成24年1月10日福岡高裁判決で約3800万円の損害賠償が認められたようです。
結局,設計者,監理者,及び,施工業者は,
1 建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務があり,
2 1の義務を怠ったために建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵(居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵であり,現実的な危険だけでなく,将来の危険も含む)があり,
3 2により居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合
不法行為責任を負う,ということになります。
ここで,注意しておきたいのは,これはあくまでも契約関係にない者間の「不法行為」の問題です。
契約関係にある者(注文者と請負人,売主と買主)間の話ではありません。
先般,一戸建の注文者側を代理して,施工業者に対して,瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求している事件で,ある裁判所の調停委員に,
「先般の最高裁の判例でも,瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なうものでなければならないとされたでしょ。」「建物の基本的な安全性を損なわないような軽微な瑕疵は瑕疵ではないんですよ。そこのところをどのようにお考えですか?」
と勘違い質問をされました。
私が,それは不法行為の場面の問題であって,請負契約における瑕疵担保責任の判例ではないですよ,と説明したのですが,その調停委員は聞く耳持たずです...。
丁重に不調にしていただきましたw。
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液状化問題
- 2012年2月 3日 00:41
- 欠陥住宅
昨年の東日本大震災で液状化した浦安の住宅について、住民らが三井不動産に対して、損害賠償を求める集団訴訟を提起したようです。
新聞報道だけなので、詳細はわかりませんが、どうも不法行為に基づく損害賠償が根拠のようです。
通常は、売買による瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を根拠にすることが多いのですが、たぶん消滅時効(正確には除斥期間といいますが)の問題があったのだとおもいます。
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、原則、瑕疵(欠陥)を知った時から1年以内に権利行使をしなければいけません。この原則によれば、知った時、すなわち昨年の震災時(3・11)から1年ということになります。
しかし、多くの場合、売買契約書の裏面に小さな文字で、この期間が、「引渡時から」1年とか2年と定められ、上記原則が修正されています。
ですので、既に契約書で定められた期間が経過していたのだと推測されます。
また、「品確法」という法律で、基礎のような「住宅の構造耐力上主要な部分」については、契約書に上記のような修正がなされていても、引渡から10年まで瑕疵担保責任を追求できるという更なる修正がなされているのですが、引渡しから10年が過ぎていたり、この法律の施行(平成12年)前の契約だったと推測されます。
このような事情から、瑕疵担保責任ではなく不法行為に基づく損害賠償という法律構成だったのでしょう。
不法行為に基づく場合と、瑕疵担保責任に基づく場合の大きな違いは、売主の認識まで立証しなければならない点かと思われます。
瑕疵担保責任の場合、当該住宅の「瑕疵」すなわち、住宅に内在する欠陥の存在を立証すればいいのですが、不法行為を理由とする場合、売主の「過失」を立証しなければならず、そのためには、液状化する可能性がある土地であることを認識し(または認識し得べきで)、それに対する対策が取られていない土地であることを認識していたという売主側の主観を立証しなければならないというハードルが加わるのだと思われます。
阪神大震災の時も液状化の問題が取り上げられましたが、私が調査した限り、液状化の問題に関する判決はほとんどありません。ですので、この浦安の集団提訴の行方はとても気になります。
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信頼できる建築士さん。
- 2009年1月 8日 22:24
- 欠陥住宅
「欠陥住宅紛争」,
「建築士選びが大事」,
からずいぶん長々と引っ張ってしまいましたが,私が最も信頼している建築士さんは,...。
このサイトを見ていただければわかりますが,情報量が豊富ですし,視覚的効果によって,素人にもわかりやすく説明されています。
裁判官も建築には素人ですから,素人にもわかりやすい資料を作成してもらえるという点でとても助かっています。
こんな本もだしてます。
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建築士選びが大事
- 2008年7月 4日 10:47
- 欠陥住宅
「欠陥住宅紛争」で,建築紛争には建築士選びが大事と述べましたが,私も建築士選びでは苦労しました。
もう6,7年前でしょうか?初めて欠陥住宅紛争の依頼を受けました。しかし,建築に関する知識は全くありませんでした(今もありませんが…。)。建築士による意見,補佐,助言が欲しかったのですが,知り合いに建築士もいませんでした。
そこで,私の依頼者に,「建築士の補佐が必要ですから,建築士を探してください。」とお願いをしました。
私の依頼者は,ネットやタウンページを使って,何人かの建築士さんに飛び込みで,電話相談をしたそうです。
依頼者は,電話で,欠陥現象の一つである「床鳴り」があることを説明すると,
ある建築士さんは,「床鳴りなんて,どの家でもある。私の家でも床鳴りぐらいする。」と,「床鳴りぐらいでうるさいこと言うな」と怒られてしまったようです。
また,ある建築士さんは,かなり高齢のようで,電話での会話がまともにかみ合わなかったようです。
こんなことを何人か繰り返し,やっといい建築士さんにめぐり合えたようです。依頼者によれば,電話での会話も非常に温和で,建築士協会でも地位が上の方だったようです。
というわけで,その建築士さんに現場を見に来てもらいました。私も同席しました。確かに,とても人当たりのいい,感じの言い方でした。
そして,ひととおり現場を見ると,「これはひどいですね。」,「これも瑕疵ですね。」,「あれも瑕疵ですね。」と言ってくれるので,依頼者もその気になってしまいます。
建築士さんには,私から,これから訴訟をすること,その訴訟での証拠として,欠陥に関する意見書(鑑定書)を作成して欲しいこと,意見書にはどのようなことを記載して欲しいかなどを説明し,建築士さんの了解をもらいました。
費用は,100万円を超えていました。
と,ここまではまだよかったのですが,これからが大変でした。
まず,意見書がなかなか提出されませんでした。
何度も催促をしていたのですが,「もう出来上がりました。」と蕎麦屋の出前のようなことを何度も言われ,半年以上も意見書の完成を待つことになりました。
さらに,この意見書が,全く内容がありませんでした。
表紙や体裁,ページ数は立派なのですが,よく読むと,何も中身がありません。ページ数をかせぐために図面や資料は多数添付されているのですが,肝心の「どうして欠陥なのか」という部分が全く記載されていません。
これを見て,この建築士さんにお願いをしていては,絶対に裁判には勝てない,と確信をしました。
そこで,独自にネットで建築士を探してみました。
すると,建築に関する膨大な資料がアップされたサイトを見つけたのです。しかも,その内容は建築の素人にもとてもわかりやすく記載されていました。
ビビビッときました。
「これなら裁判で勝てる」と。
これ以降,その建築士さんと,訴訟,示談交渉等何件もお手伝いいただきましたが,全て勝訴又は勝訴的和解をしています。
相手も,この建築士さんの意見書を覆すだけの反論ができないのですから,当然です。
で,そのサイトや建築士さんですが,…。
次の機会にします(もう少し引っ張ります。笑)。
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欠陥住宅紛争
欠陥住宅に関する争いは,建築士選びで成否が決まるといっても過言ではありません。
あまり欠陥住宅紛争に慣れていない弁護士さんだと,依頼者からヒアリングした欠陥現象をそのまま訴状に記載して,損害賠償額は,工務店の見積書を根拠に決めるという訴訟を行っているのをみかけます。そうすると,建築士には依頼をせず,訴訟内で裁判所が選任する建築士に「鑑定」を依頼することになります。
しかし,裁判所が選任する建築士がくせ者です。どのような経緯で鑑定をする建築士が選任されるのかよくわかりませんが,多分,建築士協会に鑑定をしてくれる建築士の推薦を依頼しているのでしょう。
それが原因か,ある程度,業界内でも地位が上(役職に就いている)の建築士が選任される傾向があるようです。
しかし,得てして,欠陥住宅紛争に関する知識は不足している方が多いようです。鑑定書を見ても,説得的な鑑定書が作成されていません。長々とくだらないことが記載されていますが,結局,「どうしてこれが欠陥なのか」,「その原因は何なのか」という中心的な議論がされていません。
「私が『欠陥』というのだから,『欠陥』だ!」と言わんばかりの鑑定書になっているのです。
これでは,裁判官も判断できません。結局,裁判所も判決を欠くことが出来ないから,延当事者の筋違いな議論に引きずれられて,延々を長期に亘る裁判を続けることになります。
ですので,欠陥住宅紛争は,訴訟を提起する前に,ちゃんとした知識を有した建築士に鑑定書を作成してもらってから訴訟を提起すべきです。
しかし,この「ちゃんとした知識を有した」建築士を探すのが大変です。
この点については,また後日にします。
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